福祉用具の貸与と販売の選択制はどうなった?対象4種目と手すりが外れた理由【2024年4月〜】

【2026年8月 追記】この記事は2022年3月、検討会が立ち上がった段階で書いたものです。その後2024年4月に「選択制」という形で制度化されました。当時の議論と、実際にどう決着したのかを比べられるよう、当時の記事はそのまま残し、末尾に結果と現在の運用を追記しています。

結論:手すりは対象外、4種目だけが「選択制」になりました

先に結果からお伝えします。当時いちばん警戒されていた手すりは、貸与のまま残りました。そして「販売へ全面切り替え」ではなく、貸与と販売を利用者が選べる「選択制」という着地になっています。

2024年4月から選択制の対象になった4種目

  • 固定用スロープ
  • 歩行器(歩行車を除く)
  • 単点杖(松葉づえを除く)
  • 多点杖

当時の記事で挙げた「歩行補助杖・歩行器・手すり」のうち、手すりが外れ、代わりに固定用スロープが入った形です。以下は、その決着を知らずに書いた2022年当時の記事です。

(2022年3月時点の記事)検討会で議論されていた2つの見直し

 厚生労働省は財務省からの介護保険制度改革提言を受け、介護保険制度における福祉用具貸与・販売の見直し検討会を立ち上げ、次の2点を見直す検討に入っています。


①歩行補助杖、歩行器、手すりを貸与から特定福祉用具販売へ切り替え

【解説】

特に手すりですが、毎年毎年かなり給付が伸びています。今後もずっとレンタルが増え続けるのをここらで止めたいということ。レンタルよりも販売の方が給付費が安いというデータがあることから販売へと切り替える考えです。

また、歩行補助杖や歩行器、手すりのみをレンタルしているだけでもケアプラン作成費用が発生していましたが、購入になれば作成費用が不要になるため。


②ケアプランが福祉用具貸与のみの場合には、居宅介護支援介護報酬を引き下げ、サービス内容に応じた報酬体系にする。

【解説】

福祉用具のみのサービスであればケアマネージャーがマネジメントする負担も少ないので居宅介護支援介護報酬も低くていいのではないかという考えです。


※福祉用具貸与のみのケアプランは、ケアプラン全体の6,1% 、このうち1年間同じケアプランにおける品目は歩行補助杖・歩行器・手すり等が7割を占める


反対意見として

・レンタルでなく販売にすると状態変化時にまた別の商品を購入しなければいけないという 利用者さんの負担が増えるため、身体状況に応じた機種変更をしなくなる懸念がる。

・モニタリングの機会がなくなるので状況を把握する機会もなくなるため重度化を早い段階で押させることができない。結果、給付の増大につながる。


販売の方が給付費をおさえられるというデータですが、実際の歩行補助杖の平均貸与期間は6か月未満が4割とレンタル期間が短い。1年未満は約6割です。

試算すると販売68億円、貸与35億円で販売移行の方が費用は大きい。

そのためやはり貸与のほうが給付費が減らせるのではないか。


ただ、歩行補助杖だけみればそうですが、手すりについては長期にレンタルされる方も多い。


また、購入品がたくさん市場に出回れば中古の売買なども盛んになるかもしれないので単純に「販売の方が費用が多い」とは言えないです。



【2026年8月 追記】実際はこう決着しました

「全面切り替え」ではなく「選択制」になった

2024年4月から、上記4種目については利用者が貸与と販売を選べる形になりました。事業者が一方的に販売へ切り替えるのではなく、選ぶのは利用者側です。

当時の記事で私が指摘した「状態が変われば買い直しになり、利用者の負担が増える」「モニタリングの機会がなくなる」という懸念は、審議の過程でも同じように議論されました。その結果、次のような歯止めが設けられています。

  • 選択にあたって、医師やリハビリ専門職の意見を確認すること
  • 貸与・販売それぞれのメリットとデメリットを利用者に説明すること
  • 販売を選んだ場合も、使用状況の確認(モニタリング)を行うこと

つまり「売って終わり」にはできない設計になりました。ここは当時心配していたところなので、正直ほっとしています。

手すりが外れたのは大きい

当時の記事に書いたとおり、手すりは長期にレンタルされる方が多い種目です。ここが販売に移っていたら、状態が変わるたびに買い直すか、合わない手すりを使い続けるかの二択になっていました。対象外になったのは妥当な判断だったと思います。

一方で、記事の最後に書いた「財務省の本丸は手すりではないか」という見方は今も変わりません。今回の4種目は入口で、次の改定でまた議論に上がる可能性はあります。

杖の試算について

当時、歩行補助杖は平均貸与期間が6か月未満が4割、1年未満が約6割と短く、試算すると販売のほうが費用が大きくなる、と書きました。この点は最後まで論点として残り、結果として「一律に販売へ移す」という結論にはならなかったわけです。数字を見て考えた当時の見立ては、そう外れていなかったと思っています。

現場で働く方・ご家族が今おさえるべきこと

福祉用具専門相談員・ケアマネジャーの方へ

  • 4種目については、貸与と販売の両方を説明する義務がある
  • 説明した内容は記録に残す
  • 販売を選んだ場合も、使用状況の確認は必要

ご家族・利用者の方へ

  • 短期間で状態が変わりそうなら貸与が向いています。合わなくなったら交換できます
  • 長く同じものを使う見込みなら販売のほうが負担が軽くなることがあります
  • 迷ったら、担当のケアマネジャーか福祉用具専門相談員に「両方の場合でいくらになるか」を出してもらってください

保険の範囲で足りないときの選択肢

選択制の話とは別に、現場でよく聞くのが「介護保険では頼めないことがある」という悩みです。

制度の枠内でできることは決まっています。ご本人以外のための家事、通院以外の外出の付き添い、長時間の見守り。これらは介護保険の訪問介護では対応できません。

ここを埋めるのが保険外(自費)の介護サービスです。費用はかかりますが、時間も内容も自由に組めます。「保険で足りない部分だけ自費で足す」という組み合わせ方を知っておくと、選択肢が広がります。

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福祉用具そのものについて詳しく知りたい方へ

種目ごとの選び方や、介護保険で借りられるもの・買うものの違いについては、別に運営している福祉用具の紹介ブログで、実際の商品を見ながら解説しています。手すりや住宅改修についてはリフォームの知識獲得ブログにまとめています。

制度を体系的に学びたい方へ

介護保険制度は数年ごとに改定があり、そのたびに現場の運用が変わります。改定のたびに断片的に追いかけるより、一度体系立てて押さえておくほうが結局は早いと感じています。

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まとめ

  • 2022年当時に議論されていた「貸与から販売へ」は、2024年4月に「選択制」として制度化された
  • 対象は固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖の4種目
  • 手すりは対象外。貸与のまま残った
  • 販売を選んでも、医師等の意見確認・両方の説明・使用状況の確認が求められる
  • 短期で状態が変わりそうなら貸与、長く使うなら販売、が基本的な考え方

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