福祉用具専門相談員は住宅改修にどこまで関わるべきか|手すりの位置決めを工事業者に任せてはいけない理由
住宅改修の相談を受けたとき、「工事のことは工務店に任せればいい」と思っていませんか。
私はこれまで福祉用具貸与の事業所を運営しながら、リフォーム工事も手がけてきました。その経験から言えるのは、手すりの位置と高さを決めるのは、工事業者ではなく福祉用具専門相談員の仕事だということです。
ここを工事業者に丸投げしてしまうと、規格どおりに付いているのに使えない手すりができあがります。この記事では、福祉用具専門相談員が住宅改修にどこまで関わるべきかを、実際の役割分担で整理します。
良い住宅改修に必要な2つの知識
良い住宅改修工事を行うためにはなぜ工事業者に任せてはいけないのか
工事業者は「壁のどこに下地があるか」を見ます。これは工事業者にしかできない、大事な判断です。
一方、福祉用具専門相談員が見るのは「その人がどう動くか」です。どちらの手で支えるのか、立ち上がるときに体をどう倒すのか、車いすからどう移るのか。ここは利用者さんの体を見ている側にしか分かりません。
両方が必要なのに、片方だけで決めてしまうと次のようなことが起きます。
- 下地のある場所に付けたが、動作の線から外れている … 握れるが、力が入らない
- 高さが標準値どおりだが、その人には高すぎる … 肩が上がって支えられない
- 長さが足りず、途中で手を離すことになる … いちばん危ない瞬間に支えがない
どれも「工事としては正しく施工されている」のに、使えない手すりです。この差を埋めるのが福祉用具専門相談員の役割だと思っています。
最低限おさえておきたい3つの知識
建築が苦手でも、この3つを知っているだけで工事業者との会話が変わります。
1. ブラケット(金具)の間隔には上限がある
手すり棒の太さによって、金具と金具の間隔の上限が決まっています。木製の35mmなら900mm以内、32mmなら700mm以内が目安です。細いほうが握りやすいからと32mmを指定すると、下地の追加が必要になることがあります。「握りやすさ」だけで選べない理由がここにあります。
2. 柱は約910mm間隔で入っている
日本の住宅では柱・間柱がおよそ455mmか910mm間隔で立っています。手すりを付けられる位置は、この下地の位置に制約を受けます。「ここに付けたい」が通らないときは、たいていこれが理由です。
3. 下地がなくても付けられる場合がある
補強板を貼る、中空壁用アンカーを使うなど、方法はあります。「下地がないので無理です」と言われても、そこで諦めないでください。別の業者なら別の提案が出てくることがあります。
丸投げの会社にいても、できることはあります
本文に書いたとおり、工事を自社でやっていなくても住環境のアドバイスは福祉用具専門相談員の仕事です。
具体的には、次のことは工事会社が決まっていなくてもできます。
- 利用者さんの動作を見て、手すりが必要な位置に印をつける
- 高さを実際に体で合わせてもらい、数字で残す
- そもそも工事が要るのか、置き型の手すりで足りないかを検討する
- 介護保険の住宅改修と福祉用具貸与のどちらを使うのが得かを整理する
最後の点は特に大きいところです。工事をしない選択肢を先に検討できるのは、福祉用具側の人間だけです。20万円の枠は住まい全体で使うものなので、置き型で足りるなら枠を温存できます。
工事を外注している事業所の方へ
自社で工事をしていない場合、どの工務店に依頼するかで仕上がりが変わります。福祉住環境の意図を汲んでくれる業者かどうかは、実際に何度か組んでみないと分かりません。
候補を増やしておきたいときは、一括見積もりで複数社の対応を比べてみるのも一つの方法です。金額だけでなく、こちらの指定(位置・高さ・長さ)にどう反応するかを見ると、相性のよい業者が見つかりやすくなります。
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依頼先の候補を広げたいときに。複数社の見積と提案を並べて比べられます。
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手すりの実務について詳しく
手すりの下地・ブラケット間隔・後付けの可否については、別に運営しているリフォームの知識獲得ブログで施工写真つきで解説しています。福祉用具側の話は福祉用具の紹介ブログにまとめています。
体系的に学びたい方へ
福祉住環境の知識は、現場で覚えるのがいちばん早いのですが、建築側の用語を最初にひととおり押さえておくと、工事業者との会話が一気に楽になります。福祉住環境コーディネーターのテキストは、この用途にちょうどよい範囲をカバーしています。
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まとめ
- 良い住宅改修には福祉住環境の知識と住宅リフォームの知識の両方が要る
- 工事業者が見るのは下地、福祉用具専門相談員が見るのは動作。どちらが欠けても使えない手すりになる
- 手すりの位置・高さ・長さ・形状の指定は、任せきりにしない
- 最低限、ブラケット間隔の上限・柱の位置・下地がない場合の方法は知っておく
- 工事を自社でやっていなくても、動作を見て印をつけることはできる
- 工事をしない選択肢を先に検討できるのは福祉用具側だけ
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